永住許可とは、在留期間の制限なく日本に住み続けられる在留資格です。経営者の場合、収入や事業の規模が十分でも不許可になることがあります。原因は在留資格の基準、納税の時期、社会保険、在留の継続性の4つに集中しており、いずれも申請の直前には直せません。住民税の証明書は直近5年分を提出するため、過去の納付状況がそのまま審査の対象になります。

なぜ経営者は落ちやすいのか

不許可の原因は、事業の実績とは別のところにあります。会社員であれば給与から所得税と住民税が天引きされ、社会保険も会社が手続きするため、公的義務の履行が自動的に整う仕組みです。経営者は自分で納付の時期を管理し、会社側の社会保険の適用も自分の責任で行うため、そのぶん抜けが生じやすくなります。海外出張の多さも、在留の継続性という要件に影響してきます。

理由1 在留資格の基準を満たしていない

2025年10月16日に在留資格「経営・管理」の許可基準が改正されました。資本金等3,000万円以上、常勤職員1人以上の雇用、申請者または常勤職員のいずれかが日本語B2相当以上であること、経営・管理について3年以上の経験または関連分野の学位が求められます。

出入国在留管理庁は、施行日後に改正後の許可基準に適合していない場合、「経営・管理」「高度専門職1号ハ」「高度専門職2号」からの永住許可は認められないとしています。在留期間の更新については令和10年10月16日までの経過措置がありますが、永住許可申請はこの経過措置の対象ではありません

高度専門職のポイントが80点に達していても、この基準を満たしていなければ永住には進めません。更新が通っているから永住も大丈夫だ、という理解は誤りです。改正の全体像は「【2025年10月改正】経営・管理ビザの5つの新要件」で解説しています。

理由2 納税は金額ではなく「時期」を見られる

永住許可申請では、住民税の課税証明書と納税証明書を直近5年分提出します。ここで確認されるのは、納期限内に納付したかどうかです。

経営者は、住民税を給与から天引きされる特別徴収ではなく、自分で納付する普通徴収になっている場合があります。所得税の予定納税もあり、納付の機会が会社員より多くなりがちです。数日遅れただけの履歴でも記録に残り、5年分の提出書類に現れます。

すでに遅延がある場合は、その履歴が提出範囲から外れるまで待ってから申請するという判断もあり得ます。申請の時期そのものを設計する必要がありますので、早い段階で証明書を取り寄せて現状をご確認ください。要件の全体像は「永住許可 要件診断」で確認できます(入力内容は送信されません)。

理由3 会社の社会保険

公的年金と公的医療保険の保険料についても、納付状況を証明する資料の提出が必要です。経営者の場合は個人としての納付に加えて、会社が適用事業所として社会保険に加入し、保険料を納めているかが問われます。

法人であれば、代表者一人の会社でも社会保険の適用対象です。未加入のまま事業を続けてきた場合は、加入手続きを済ませたうえで納付の実績を積む必要があり、相応の時間がかかります。

理由4 在留の継続性

永住許可には、引き続き日本に在留していることが求められます。長期の出国や出国日数の累積があると、在留が継続していないと判断される場合があるためです。

海外に取引先を持つ経営者は出張が多く、本人が意識しないうちに出国の日数が積み上がっていることがあります。過去の出国記録は変えられません。渡航を計画する段階から在留の継続性を意識しておく必要があります。日数の具体的な扱いは個別の事情により判断されますので、心当たりのある方は事前にご相談ください。

落ちないための順序

対策には、時間のかかるものと直前でも間に合うものがあります。

まず取り組むべきは、住民税と社会保険料の納付履歴の確認です。証明書を取り寄せれば現状が分かり、遅延があれば申請の時期に反映できます。次が出国記録の集計と、在留資格の基準への適合状況の確認です。

身元保証人の確保や必要書類の収集は、申請が近づいてからでも間に合います。順序を逆にすると、書類を揃えた段階で納付履歴の問題が判明し、そこから何年も待つことになりかねません。

なお、永住許可の審査そのものにも時間がかかります。出入国在留管理庁が公表する在留審査処理期間では、令和8年5月許可分の永住許可申請は、申請の受理から許可の告知まで全国平均292.1日でした。準備期間に審査期間が加わることを前提に、逆算して動く必要があります。

永住までの道筋の全体像は「経営者が日本で永住を目指すには」をご覧ください。高度専門職を使った短縮の可否は「高度専門職ポイント計算」で試算できます。

よくある質問

住民税を過去に一度だけ遅れて納付しました。永住は諦めるべきですか。
一度の遅延で必ず不許可になるとは限りませんが、審査では不利に働きます。提出する納税証明書は直近5年分のため、遅延の時期によっては、その履歴が提出範囲から外れるまで待つという選択肢もあります。判断は個別の状況によって変わるものとお考えください。

会社の業績が良ければ、納税の遅れは考慮されますか。
審査では、納期限内に納付したかどうかが確認されます。業績や収入の多さが遅延を補うものではありません。

高度専門職のポイントが80点あります。経営・管理の基準は関係しますか。
関係します。出入国在留管理庁は、改正後の許可基準に適合していない場合、高度専門職1号ハからの永住許可は認められないとの立場です。ポイントとは別に、資本金等や常勤職員などの基準を満たす必要があります。

日本語能力は経営者本人が持っていなければならないのですか。
「経営・管理」の許可基準では、申請者または常勤職員のいずれかが日本語B2相当以上であればよいとされています。ただし高度専門職のポイント計算では、本人の日本語能力が加点の対象です。

本記事は在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正(2025年10月16日施行)、永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)および出入国在留管理庁「在留審査処理期間」(令和8年5月許可分)等をもとにした一般的な解説であり、2026年時点(最終確認日:2026年7月27日)の情報です。要件・運用は変わり得ますので、実際の申請にあたっては最新の公表資料をご確認ください。本記事は許可を保証するものではありません。
在留資格に関する申請書類の作成および官公署への提出代理は、行政書士法に基づき当事務所(東京都行政書士会所属)の行政書士が行います。制度の選定支援・事業計画づくり・経営に関する分析等の非独占業務は、提携する株式会社Red Finbackが提供します。事業計画書の確認が中小企業診断士・公認会計士・税理士に限定される制度(在留資格「経営・管理」等)については、当事務所は確認主体とはならず、提携専門家をご紹介のうえ申請書類の作成・提出代理を担当します。

更新履歴:2026.07.27 初版公開